歯科医師国家試験に無事合格した僕は大学に残る人が多い中、外の世界をまず体験したいと研修医を外部の歯科医院にお世話になるコースを選びました。そこでお世話になったのが和歌山県田辺市にあります岩上歯科でした。
こちらの医院では本当に良い記憶しかなく、勉強をするのに最高の場所でした。自主的に勉強会に行きたいといってもその旅費を出していただいたり、そして出したレポートに対してしっかりと返事をしてくださり、どんどんモチベーションも出て勉強が楽しいと感じた和歌山生活でした。
風光明媚なところでもあり、綺麗な浜辺もあればちょうど良い登りやすい山もあり、日曜日は必ず海か山に行き歯科の本を読むというのが習慣になっていました。
人を褒めるのが上手な先生で、「坪ちゃんはすごいなぁ」と、先生の方がはるかに博識なのにいつもいってくれました。生活は自炊なのですが、食材をいつも分けていただいたり、あまりに良くしてくださるので、聞いた時があったのですが、院長が若い時に上の先生に同じ様に良くされたからだと答えてらっしゃっていました。将来自分も院長のように他の人に与えられる様になりたいと強く思いました。
何事も始める時が肝心だと思いますが、私の歯科医師人生は間違いなく岩上歯科に出会ったことで良い方向に向かいました。大学時代の勉強と違い、患者さんのために勉強をすることができ、それを人のために還元することができます。その勉強をする事を評価していただいたのが岩上歯科でした。院長はいつまでも私の恩師です。
大学に残るかどうかに関しても、なんとなく大学に残る人が多く、それがいい事なのかどうか悩んでいたのですが、「坪ちゃんは頭がいいから 絶対研究した方がいい」とおだてていただいたのだと思いますが、強く推してくれたのも岩上先生でした。
大学の研究室に残るのであればと大学生時代から考えていたのは歯周病という分野でした。当時は歯周病がどういう病気であるか全くわかっておらず、ただ単純に生涯をかけて取り組むことのできる課題としては被せ物やインプラントなどよりも、歯周病の方が、自分が歳をとっても全力で取り組めるだろう、そしてデータをとってそれを振り返ったときに自分の医院がこんなに人を助けられたと感じられるのも歯周病ならではだろう、と思い、歯周病学分野に入局しました。
こちらでも上司に恵まれ、現在は教授になられている青木先生のグループで研究をすることができました。青木先生はとにかく妥協をせずに先を見据えて治療をされているのが特徴的でした。
ここまでで良いなどの線引きをせずに、これで完璧だと思うまで突き詰めて治療、研究をされています。話好きの先生ではなかったですが、ふとしたときに考えている事をお話しくださって、歯科に携わるとはどういうことか、人生においての仕事観、健康であることの価値などさまざまな面で方向性を示してくださいました。
青木先生から開業祝いをいただいたのですが、私の目がつくところに置いてあり、見るたびに身が引き締まる思いで、大学とは非常勤講師と少し距離ができてしまいましたが、いつまでも歯科における師匠と思っています。