歯科医師と歯科衛生士のチーム医療。予防歯科を支える連携のしくみ
「歯科医院では、先生と歯科衛生士さんはどう違うのですか?」
患者さんから、こうしたご質問をいただくことがあります。
診療室の中では、歯科医師と歯科衛生士がそれぞれ関わっているため、「何が違うのだろう」「どのように連携しているのだろう」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
実際のところ、予防歯科を大切にする医院では、歯科医師だけでも、歯科衛生士だけでも十分とはいえません。
患者さんのお口の健康を長く支えていくためには、それぞれの専門性を生かしながら、情報を共有し、同じ方向を向いて関わっていくことが大切です。
これが、私たちが大切にしている「チーム医療」の考え方です。
今回は、湘南予防・歯科室で大切にしているチーム医療について、歯科医師と歯科衛生士がどのように連携しているのかを、患者さんにもわかりやすくお伝えします。
この記事でわかること
- 湘南予防・歯科室が考えるチーム医療とは何か
- 歯科医師と歯科衛生士の役割の違い
- 歯科衛生士が予防歯科で担う専門的な役割
- 歯科医師と歯科衛生士が連携する意味
- チームで関わることで患者さんにどんなメリットがあるのか
チーム医療とは、それぞれの専門性を生かして患者さんを支えること
「チーム医療」というと、少し難しく聞こえるかもしれません。
ですが、考え方はとてもシンプルです。
患者さんのお口の健康を守るために、歯科医師や歯科衛生士などが、それぞれの専門性を持ち寄りながら連携して関わることです。
歯科医師には、診断を行い、治療方針を考え、必要な治療を進めていく役割があります。
一方で歯科衛生士には、歯周病やむし歯の予防管理、メインテナンス、専門的な口腔ケア、セルフケア支援など、患者さんの毎日に近いところで健康づくりを支える役割があります。
日本歯科衛生士会では、歯科衛生士を、歯科疾患の予防と口腔衛生の向上を図るため、歯と口腔の健康づくりをサポートする専門職と説明しています。
どちらが大事ということではなく、役割が違うからこそ連携が必要です。
たとえば、治療が必要な状態を見逃さないことも大切ですし、治療後によい状態を長く保つことも同じくらい大切です。
予防歯科では、この両方がそろってはじめて患者さんをしっかり支えやすくなります。
やさしく言うと:歯科医師は「診断と治療の専門家」、歯科衛生士は「予防と継続支援の専門家」。それぞれの得意分野を生かしながら、一緒に患者さんを支えるのがチーム医療です。
一人の患者さんを、ひとつの視点だけで見ない
お口の健康は、むし歯があるかないかだけで決まるものではありません。
歯ぐきの状態、磨きやすさ、生活習慣、食習慣、通院しやすさ、不安の強さなど、いろいろな要素が関わっています。
そのため、歯科医師の視点だけ、あるいは歯科衛生士の視点だけで見るよりも、複数の専門的な視点を合わせて考えるほうが、その方にとって無理のない方法を見つけやすくなります。
チーム医療は、患者さんを“口の中だけ”で切り取らず、より立体的に理解していくための土台でもあります。
当院の予防歯科の考え方については、予防歯科のページでもご紹介しています。
歯科医師の役割は「診断」と「治療の方向づけ」
歯科医師の大きな役割は、現在のお口の状態を把握し、必要な診断を行い、どのような治療や管理が望ましいかを考えることです。
むし歯の治療、歯周病の評価、かみ合わせや被せ物の確認、抜歯や修復治療の判断などは、歯科医師が責任をもって行います。
また、症状が出ているところだけを見るのではなく、「なぜその問題が起きたのか」「この先どうすれば再発しにくいか」まで含めて全体を考えることも大切な役割です。
治療が必要な場面では、その必要性や選択肢を患者さんにわかりやすく説明し、納得して進められるようにすることも欠かせません。
歯科医師の資格や社会的な役割について、歯科医師法では、歯科医療および保健指導を通じて公衆衛生の向上・増進に寄与し、国民の健康な生活を確保することが示されています。
治療だけで終わらせない視点が大切です
予防歯科を重視する医院では、治療そのものだけで完結するとは考えていません。
たとえば、むし歯を治したとしても、その背景にあるセルフケアの難しさや生活習慣が変わらなければ、再発のリスクは残ることがあります。
歯周病も、処置だけでなく、継続的な管理が大切です。
そのため歯科医師は、治療を行うだけでなく、その後の管理がうまくつながるよう歯科衛生士と連携しながら診療を進めていきます。
ここに、チーム医療の大きな意味があります。
歯科衛生士の役割は「予防」と「日々の支援」
歯科衛生士は、患者さんのお口の健康を日常に近いところで支える専門職です。
歯石除去やクリーニングだけが仕事だと思われがちですが、実際にはそれ以上に幅広い役割があります。
歯ぐきの状態を確認し、磨き残しの傾向を見て、セルフケアの工夫を一緒に考えること。
患者さんが困っていることや不安を受け止めながら、無理なく続けられる方法を提案すること。
定期的なメインテナンスの中で小さな変化に気づき、必要に応じて歯科医師につなぐこと。
これらはすべて、予防歯科における歯科衛生士の大切な役割です。
厚生労働省の歯科衛生士の業務に関する資料では、歯科衛生士は歯科医師の指示のもと歯科診療の補助を行うことができ、歯科予防処置、歯科診療補助、歯科保健指導などを担う職種として整理されています。
ポイント:歯科衛生士は「お口をきれいにする人」だけではありません。患者さんがよい状態を保ちやすくなるよう、毎日のケアと継続的な管理を支える専門職です。
患者さんの変化に気づき、橋渡しをする役割
歯科衛生士は、患者さんと比較的長い時間をかけて関わることが多いため、小さな変化に気づきやすい立場でもあります。
「最近ここが磨きにくそう」「歯ぐきの出血が増えている」「前回よりセルフケアがうまくいっている」といった変化は、継続して見ているからこそわかることがあります。
その気づきを歯科医師に共有することで、必要な診断や対応につながりやすくなります。
逆に、歯科医師が考えた治療方針や注意点を、歯科衛生士が日々のケアや説明の中で患者さんにわかりやすくつなげることもあります。
歯科衛生士は、診療の現場でとても大切な橋渡し役でもあるのです。

湘南予防・歯科室では、どのように連携しているのか
当院では、歯科医師と歯科衛生士が別々に動くのではなく、患者さんの情報を共有しながら連携して診療を進めることを大切にしています。
お口の中の状態だけでなく、患者さんがどのようなことに困っているのか、どの説明で納得しやすいのか、どこに不安を感じているのかといったことも、できるだけチームで共有します。
たとえば、歯科衛生士がメインテナンスや初期治療の中で気づいた歯ぐきの変化やセルフケアの課題を歯科医師に伝えることで、診断や治療方針に生かしやすくなります。
反対に、歯科医師が確認した治療上のポイントや注意点を歯科衛生士が把握しておくことで、次回以降のケアや説明に一貫性を持たせやすくなります。
患者さんの情報をチームで共有するために、当院ではカルテや口腔内写真などの記録も大切にしています。
詳しくは、当院ブログの「カルテや写真を細かく記録する理由」に関する記事も参考になります。
患者さんへの説明に一貫性を持たせる
歯科医院で不安が生まれやすい理由のひとつに、「人によって言うことが違うように感じる」という点があります。
私たちは、コミュニケーション不足や説明不足が、患者さんの不安につながりやすいと考えています。
そのため、歯科医師と歯科衛生士が共通の方向を向いて説明し、患者さんが混乱しないよう心がけています。
同じ内容をただ繰り返すのではなく、それぞれの立場から補い合うことも大切です。
歯科医師が治療の必要性や医学的な背景を説明し、歯科衛生士が毎日のケアや通院の中で実践しやすい形に落とし込む。
こうした連携が、患者さんの納得感につながると考えています。
当院が大切にしている診療方針については、当院についてのページでもご紹介しています。
予防歯科では「治す人」と「守る人」を分けない
実際には、歯科医師が治療だけを見て、歯科衛生士が予防だけを見ているわけではありません。
お互いが患者さんのお口の健康を守るという同じ目的を持ちながら、役割分担しているのが理想的な形です。
治療の視点と予防の視点がつながることで、患者さんにとってより自然で続けやすい医療になっていきます。
やさしく言うと:先生と衛生士が別々に動いているのではなく、同じ地図を見ながら役割を分けて進んでいるイメージです。
メインテナンスは、チーム医療が特に生きる場面です
メインテナンスでは、歯みがきの状態、歯ぐきの状態、歯周ポケットの深さ、咬み合わせ、修復物や入れ歯の状態など、さまざまな項目を見ていきます。
厚生労働省 e-ヘルスネット「メインテナンス」でも、歯周治療後のメインテナンスでは、歯みがきの状態、歯ぐきや歯周ポケット、咬み合わせ、義歯や修復物の状態などをチェックすると説明されています。
このような確認は、歯科衛生士が継続的に患者さんと関わる中で気づくことも多くあります。
一方で、歯周ポケットの変化、歯の動揺、咬み合わせ、被せ物の破損、むし歯の疑いなど、歯科医師の診断や治療判断が必要になる場面もあります。
だからこそ、メインテナンスは「衛生士だけの時間」でも「先生だけの時間」でもありません。
歯科衛生士が日々の変化に気づき、歯科医師が診断と治療方針を整理し、患者さんにわかりやすく共有する。
この連携があることで、メインテナンスの価値はより高まります。
歯周病やメインテナンスについて詳しく知りたい方は、当院の歯周病治療のページもご覧ください。
予防歯科の視点:メインテナンスは、歯科衛生士が継続的に支え、歯科医師が必要な診断と治療判断を行う、チーム医療がもっとも生きる時間のひとつです。

チーム医療が患者さんにもたらすメリット
チーム医療のメリットは、院内の連携がよくなることだけではありません。
最終的に大切なのは、患者さんが安心して通いやすくなり、ご自身のお口の健康を守りやすくなることです。
歯科医師と歯科衛生士が連携していると、気になる変化を早めに共有しやすくなりますし、説明に一貫性が出やすくなります。
患者さんにとっても、「誰に聞いても話がつながる」「自分のことをチームで見てもらえている」と感じやすくなります。
また、治療が必要なところは適切に対応しながら、その後のメインテナンスやセルフケア支援まで切れ目なくつなげやすくなるため、治療して終わりではないサポートがしやすくなります。
予防歯科では、この“切れ目がないこと”がとても大切です。
厚生労働省のチーム医療関連資料でも、チーム医療を推進するためには、医療関係職種がそれぞれの立場や役割について理解を深め、それぞれの専門性を尊重することが重要と整理されています。
まとめ。チーム医療は、患者さんを中心にした予防歯科の土台です
湘南予防・歯科室が大切にしているチーム医療とは、歯科医師と歯科衛生士がそれぞれの専門性を生かしながら、患者さんのお口の健康を一緒に支えていく考え方です。
歯科医師は診断と治療の方向づけを担い、歯科衛生士は予防と継続支援を担う。
その連携によって、患者さんにとってより安心感のある、納得しやすい診療につながっていきます。
お口の健康は、治療だけでも、セルフケアだけでも守りきれないことがあります。
だからこそ、専門職どうしが連携し、患者さんとも協力しながら進めていくことが大切です。
チーム医療は、患者さんを中心に据えた予防歯科の土台だと、私たちは考えています。
「先生と衛生士さんがどう連携しているのか、少しわかってきた」と感じていただけたならうれしく思います。
気になることはお気軽にご相談ください
湘南予防・歯科室では、患者さん一人ひとりが納得しながら通えることを大切にしています。
治療のこと、予防のこと、メインテナンスのこと、それぞれを別々に考えるのではなく、チームでつながりのある診療を目指しています。
「自分の口の中は今どんな状態なのか知りたい」「先生と衛生士さんはどのように見てくれているのか気になる」「予防歯科について相談してみたい」といったことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
わかりやすい説明を大切にしながら、これから先のお口の健康づくりを一緒に考えていきます。
初めて受診される方は、初めての方へのページもご覧ください。
参考情報
この記事の執筆・監修
坪川 正樹|湘南予防・歯科室 院長
東京医科歯科大学歯学部卒業。予防歯科と歯周病管理を軸に、患者さんが納得して通える歯科医療を大切にしています。歯科医師と歯科衛生士が連携し、治療と予防を切れ目なくつなぐチーム医療を重視しています。
東京医科歯科大学 歯学博士。東京医科歯科大学歯周病学分野非常勤講師。日本歯周病学会認定医。日本レーザー歯学会専門医。公認心理師。
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